獣医さんに聞く、犬の皮膚トラブルの原因とは？

動物病院の来院理由で一番多いのは、皮膚トラブルだと言われています。その原因について、獣医師である永井先生にお話を伺いました。

――病院に来るワンちゃんは、どんなトラブルが多いのでしょうか。
「皮膚トラブルが一番、あとはお腹の調子が悪い子も多いですね。
病院では皮膚トラブルの犬猫に対し、飲み薬や塗り薬を出すことになるのですが、実は薬を使わなくても良いくらいの症状が圧倒的に多いのが現状です。つまり、生活の中で解決できることがほとんどで、でもその手段を持っていない方が焦って病院に来ている印象です」

――原因はどんなことが考えられますか？
「分かりやすい原因は、食事とお手入れ法です。栄養がいき届いていなかったり、ブラッシングがちゃんとできていなかったり。ワンちゃんたちの食べ物を選んでいるのは私たち人間なのでこだわりたいところですが、原材料に気を使い、ホームメイドを徹底して…と、私たちが無理をしながら気をつけすぎることは、必ずしも良いこととは言えません。
また、忙しいからと流れ作業でブラッシングすることも、逆にストレスを感じさせてしまうかもしれません。
大事なのは、意識の向け方ではないでしょうか。日々色々なトラブルを抱えるワンちゃんたちを見てきて、一番の原因は飼い主との関係ではないかと思うのです」 

――ワンちゃんと向き合えているか、ということですね。
「はい。例えば、ワンちゃんはよく真っ赤になるまで手を舐めてしまうことがあります。そうなったら、薬に頼るだけで、何故手を舐めてしまっているのかという原因を考える人は少ないんです。でもそこを追求しないと同じことの繰り返しで、解決にはなりません。もしかしたら、仕事の忙しさ、子供の受験、引っ越し…などの飼い主さんの環境の変化でストレスを感じさせてしまっているのかもしれません」

――同じ症状で何度も病院を訪れる子も多いようですね。
「そうなんです。そもそも、人間と犬が一緒にいるようになったことを紐解くと、昔は”give & take“の関係性がありました。そう考えると、飼い主さんの役に立っていると感じさせることが大事ではないでしょうか。”give”しすぎて、過保護になってはいませんか？あれもやってあげたい、これもやってあげたい、可愛いから何もしなくてOKと、偏った接し方をしていませんか？そんなことをされたら、人間だってストレスを感じますよね。役割を分担するから、家族として成り立つのだと思います。
あとは、飼い主が抱えたストレスをワンちゃんたちが全て被っていることもあります。可愛がってもらっているのだから、自分の役割として、飼い主が背負いきれないストレスを全て被ろうとしてしまうんです」

――なるほど。多くの人がgiveしすぎているのかもしれませんね。
「はい。ワンちゃんたちとの関係性を見直すためにも、まずはgive & takeしてみてください。意識的にワンちゃんに役割をあげてみると良いと思います。お留守番させることがあったとしても、きっと人間としては後ろ髪を引かれるような気持ちで寂しいかもしれませんが、よろしくね！と、あなたがいるおかげで安心して外で仕事ができるんだよ！と、感謝して、帰ったら遊ぼうねと伝えてみることも良いかもしれません。
そのためには、毎日のコミュニケーションの時間がとても大事になります。肌に触れながら、状況を伝えたり、お願いしたり、感謝したり…ヘルシーな関係を保つことで、病院に行かずとも解決できることはたくさんあるはずですよ」

皮膚トラブルの悩みはもちろん、様々なワンちゃんたちの悩みは、もしかしたら私たちとの関係が原因なのかもしれません。
そうなる前に、触れ合い、信頼関係を築いてみてください。
大切な家族とともに、健やかで心地よい暮らしがずっと続きますように。

永井 芙美
神奈川県在住の1児の母
獣医師／動物とヒトのセラピスト

2001年獣医師免許取得後、個人の動物病院と企業の動物病院に勤務。約16年の動物病院勤務の中で、多くの検査や薬剤に頼る現代の診療方法に疑問を持つ。
「健やかであること」と「根本的に治ること」を考え直し、動物にもヒトにも関わることを決意し、「effe care／Effe Animal Care」をスタート。
「一人ひとり（1頭1頭）が健やかであること」、「動物とヒトがお互いに与える影響を考えること」をテーマに活動中。